桜を象嵌した念珠。念珠に桜って…とお思いかもしれませんがこれは一つの作品。挑戦みたいなものなんです。象嵌はけっこう過酷な作業で辛いときもありますが(ルーペで見ながらはめ込むため)出来上がりをみると苦労が吹っ飛びます。
前回紹介した「かっこみ」をつかって完成した作品です。サイズは拳くらい。僕が作品を作るときは頭の中でイメージしてから石を選んで作りに入りますが(多くの人は石を見て形を決めるらしい)なかなか理想の形には近づけないものです。しかし、今回はイメージ通りにできました。自信作です。
瑪瑙(メノウ)にワニ柄の加工をしたリングとそのまんまのワニです。なかなか格好いいと思ってます。今度自分用を作ろうとおもってます。そして、明日は代々木体育館で行われているroomsとお台場のビックサイトで行われているJJFに行く予定です。なので今日はガンガン仕事を片付けないと。。。もう8月も終わり、はやい。。。。
突然ですが自分の話をしたいと思います。僕は1973年生まれの4人兄弟の三番目。現在は僕と弟が家業を継いでいます。僕は高校を卒業と同時に今の仕事を継ぐ予定でしたが、父親の勧めで地金の勉強も兼ねてジュエリーメーカーに就職する事になりました。㈱シマダという会社に就職をする事になったのですが、この会社で培った事は今でも僕の作り手としての根源となっています。当時のこの会社の技術力は有名であり、周りにいる先輩達の素晴らしい作品作りを見れた事はとても幸運でした。ここで手作りの地金加工を勉強し、現在の貴石彫刻の道に飛び込みました。分業が主になっているジュエリー界ですが、地金も彫刻も両方出来るというのは僕の最大の強みでもあります。けれども、僕の父も含めこの業界の諸先輩方の意思を受け継ぐ一世代としては、また違う観点から思うところもあります。何故なら、ジュエリー以外にも古くから伝承されてきた器や置物、香炉、日本の美学を直に表現した素晴らしい作品群、(僕は幼い頃からそれらに囲まれて育ってきた訳ですが)、自分 がこの業界に入り彫刻家として活動してみると、それらが持つ希少な価値、それは一技術だけではなく、熟練された感性の下に存在すると思い知らされ、それらをなくしてはいけないと思うからです。まだまだな僕ですが、文化に成り得る素晴らしい日本の美学を守り、伝承し、また、新しい価値観を持つ世代を少しでも擁護出来る様な彫刻家でありたいと思います。
いろいろな半貴石に桜の花ビラの型を象嵌した玉のリングです。これは4〜5年前に作ったもの。同じ色や型にはできないので言うなれば世界に一つだけの花。。。ふるッ。。。。でもかなり難しい技法なんです。他の作品もこれからまだまだ紹介しますね。
あめ玉をイメージした作品
左から、クリソプレーズ、珊瑚、ブルーカルセドニー。15ミリの玉。この大きさはかなり貴重です。
オニキス(黒メノウ)に桜の柄を象嵌した香合です。象嵌とは、石を掘り込んでそこに違う色の石を埋め込んで柄を作ることです。結構難しいことなんです。香合とは香を収納する蓋つきの小さな容器の事で、茶道具の一種です。僕たちの仕事では、よく茶道具なども作ります。あと頻繁に作るものは仏具やお守り的な物ですね。ちなみにオニキスという石はあまり厚みがとれません。10㎜以上は結構きびしいです。豆知識。
わたしの仕事、甲州水晶貴石細工は経済産業省に指定されています。子供の頃から近くで親がやっていた仕事なので普通の仕事だと思っていたのですが、この歳になってみると長年伝わってきた伝統を守っている素晴らしい仕事だと思っています。しかし現状をみると職人さんがいなくなっていて(40代以下は多分10人位)しかも技術(伝統的な貴石彫刻などの作品、仏像や器などの置物)は間違いなく若い人達に伝承しきれていません。先日、諸先輩がたの作品がのった古い本をみつけました。その中に素晴らしい作品がたくさん載っていて、率直に「ヤバイ」と思いました。。昔の人が、日々技術やデザインを競い合っていた情熱や姿勢がその本から伝わってきました。たぶん今の自分に出来ないものもあります。そんな事は許せません。めちゃくちゃやる気になってます。少し自惚れてた自分に反省してます。何年かしたら本当に職人はいなくなると思います。確かに滅んでいる理由は時代のニーズにあっていないのかもしれません。しかし守らなくてはいけない事だと思 います。それに技術を守るために若い人も育てなくてはなりません。そう思ってます。ながなが書いてしまいましたがそんな事を思っているので書きました。頑張ります。
僕の想う父の傑作のひとつ
こちらも完成。まだまだデザインとしては完成されていませんが結構かっこいいです。自信作。自分用も作りたいです。
前とは違う顔のスカルのリングを作ってます。ひとつひとつ手作りなのでどうしても違いがでてしまうのですが、今回のはかなりかえたつもりです。わかりますかね〜。わからないかな〜。。。
これは水晶ですよ。リングに仮接着してるからミドリなんです。
まえに載せたスカル。磨いて光ってます。
コレは黒曜石で作ったスカル。
今日はラピスの鳥の修理をしました。ドイツ人が作った鳥なんですが素晴らしい作品ですね。ウットリ
古くから貴石彫刻の技術が発展した国は、中国、ドイツ、日本らしいです。