突然ですが自分の話をしたいと思います。僕は1973年生まれの4人兄弟の三番目。現在は僕と弟が家業を継いでいます。僕は高校を卒業と同時に今の仕事を継ぐ予定でしたが、父親の勧めで地金の勉強も兼ねてジュエリーメーカーに就職する事になりました。㈱シマダという会社に就職をする事になったのですが、この会社で培った事は今でも僕の作り手としての根源となっています。当時のこの会社の技術力は有名であり、周りにいる先輩達の素晴らしい作品作りを見れた事はとても幸運でした。ここで手作りの地金加工を勉強し、現在の貴石彫刻の道に飛び込みました。分業が主になっているジュエリー界ですが、地金も彫刻も両方出来るというのは僕の最大の強みでもあります。けれども、僕の父も含めこの業界の諸先輩方の意思を受け継ぐ一世代としては、また違う観点から思うところもあります。何故なら、ジュエリー以外にも古くから伝承されてきた器や置物、香炉、日本の美学を直に表現した素晴らしい作品群、(僕は幼い頃からそれらに囲まれて育ってきた訳ですが)、自分 がこの業界に入り彫刻家として活動してみると、それらが持つ希少な価値、それは一技術だけではなく、熟練された感性の下に存在すると思い知らされ、それらをなくしてはいけないと思うからです。まだまだな僕ですが、文化に成り得る素晴らしい日本の美学を守り、伝承し、また、新しい価値観を持つ世代を少しでも擁護出来る様な彫刻家でありたいと思います。
わたしの仕事、甲州水晶貴石細工は経済産業省に指定されています。子供の頃から近くで親がやっていた仕事なので普通の仕事だと思っていたのですが、この歳になってみると長年伝わってきた伝統を守っている素晴らしい仕事だと思っています。しかし現状をみると職人さんがいなくなっていて(40代以下は多分10人位)しかも技術(伝統的な貴石彫刻などの作品、仏像や器などの置物)は間違いなく若い人達に伝承しきれていません。先日、諸先輩がたの作品がのった古い本をみつけました。その中に素晴らしい作品がたくさん載っていて、率直に「ヤバイ」と思いました。。昔の人が、日々技術やデザインを競い合っていた情熱や姿勢がその本から伝わってきました。たぶん今の自分に出来ないものもあります。そんな事は許せません。めちゃくちゃやる気になってます。少し自惚れてた自分に反省してます。何年かしたら本当に職人はいなくなると思います。確かに滅んでいる理由は時代のニーズにあっていないのかもしれません。しかし守らなくてはいけない事だと思 います。それに技術を守るために若い人も育てなくてはなりません。そう思ってます。ながなが書いてしまいましたがそんな事を思っているので書きました。頑張ります。
僕の想う父の傑作のひとつ